非粘着性|粘着剤やフィルムの付着を防止するコーティング技術
粘着テープ・フィルム・ホットメルトなどの「くっつく素材」を扱う生産ラインでは、搬送部品や治具への粘着物の付着が大きな悩みです。特に高速・連続運転を求められる現場では、付着によるライン停止や清掃時間の増大が大きなロスにつながります。
そこで本記事では、非粘着性を部品表面に付与する代表的な表面処理工法を比較し、それぞれのメリット・デメリット、適用事例をご紹介します。生産設備の稼働安定化や、部品のメンテナンス性向上に貢献するヒントとしてご活用ください。

非粘着コーティングが必要とされる背景
製造現場では、以下のような場面で粘着物質が部品に付着しトラブルを引き起こすケースが散見されます。
- 粘着テープやシール材がロールやプレートに貼り付く
- ホットメルト接着剤がトレイやノズルにこびりつく
- フィルムや不織布の裏面が静電気等で吸着して剥がれにくくなる
このような現象により、ラインの停止・清掃・部品交換といった余計な手間やコストが発生してしまいます。
その対策として注目されるのが、「非粘着性(離型性)を持つ表面処理」です。
主な非粘着処理工法とその特徴
プラズマコーティング


下地にセラミックや金属溶射層を設け、その上にフッ素系やシリコーン系の離型剤を浸透・定着させる多層構造の非粘着コーティングです。表面エネルギーが極めて低く、ホットメルトや粘着剤が“まったくくっつかない”レベルの処理が可能です。
さらに、表面粗さや滑り性も調整できるため、「粘着しないのに搬送性も高い」という理想的な特性が得られます。CFRPやエンプラなど金属以外の素材にも対応し、大型ロールなどにも一括施工が可能です。
- 用途例:粘着テープラインのガイドロール、紙おむつ製造部品、食品分野にも応用可能
- 利点:非粘着性・耐摩耗性・滑り性の調整が可能。大面積や複雑形状も対応
硬質クロムめっき+PTFE含浸
耐摩耗性に優れる硬質クロムめっきに、PTFE(フッ素樹脂)を含浸させることで、滑らかな非粘着表面を実現する工法です。PTFE単独のコートよりも剥離しにくく、金属の保護効果も高いため、長寿命でメンテナンス負荷を抑えることができます。
- 用途例:粘着テープのガイドロール、食品包装の熱板、樹脂金型、押出機部品
- 利点:フッ素系の離型力とクロムめっきの耐摩耗性を両立
CVD/DLCコーティング
超硬質で摩耗に強いDLC(ダイヤモンドライクカーボン)をCVDで形成する処理。表面が非常に安定していて滑らかなため、粘着剤の付着力を低減できます。ただし、フッ素系ほどの離型性能はなく、「付着しにくい」レベルである点に注意が必要です。
DLCはPFASを含まず、環境規制に対して強い選択肢でもあります。
- 用途例:高精度金型、スリッター刃、摺動部品
- 利点:非常に硬く、薄膜で寸法精度を損なわない。潤滑性も◎
陽極酸化処理(硬質アルマイト+PTFE)
アルミ専用の表面強化処理「硬質アルマイト」に、PTFEを封孔処理することで非粘着性を付与する工法。安価かつ量産性が高く、食品機械などでも多く使用されています。防食・耐摩耗性にも優れており、アルミ部品には非常に相性が良い処理です。
- 用途例:包装機ホッパー、フィルムガイド、ホットグルー装置部品
- 利点:コストパフォーマンス良好、安全性が高く衛生的
PFAS規制と今後の非粘着処理
近年、PFAS(永続性有機フッ素化合物)規制が国際的に進みつつあります。日本では、PFOAが2021年に第一種特定化学物質に指定され、2023年4月から製造・使用が原則禁止となりました。PFOSについても同様の規制が適用されています。EUではPFAS全般の使用制限が検討されており、米国でも各州で独自の規制強化が進められています。これらの規制動向は、グローバルなサプライチェーンに影響を与える可能性があります。
PTFEやフッ素系ポリマーを用いる非粘着処理(アルマイト複合、テフロン系など)では、将来的な使用制限に備えた代替技術の検討が必要です。

抜群の非粘着性を付与|カンメタエンジニアリングのプラズマコーティング

カンメタエンジニアリングのプラズマコーティング技術は、米国デュポン社・ダウ・ケミカル社と共同開発の特殊コーティングを用いたもので、日本では当社のみが施工可能です。特殊な下地にそれらの優れたコーティングを施すことにより、従来のフッ素樹脂コーティングでは得られない高い耐久性と様々な機能を持つ珍しいコーティングをご提供しております。
- 400℃以上の高温環境にも耐えることができる特殊コーティング
- フッ素系(PTFEやPFA)のような表面特性をもつ特殊常温硬化型コーティング
- 従来のフッ素系コーティングを大幅に超える耐久性・硬さを持つ特殊コーティング

お客様の使用環境に合う各特性の絶妙な組み合わせ、高度なすり合わせが得意です。
また、プラズマコーティングの特徴として、以下が挙げられます。

✔アルミから鉄、エンジニアリングプラスチックやCFRP等の樹脂系材料まで様々な基材に適用できる
✔部品形状や使用環境に応じて皮膜特性を調整することができるオーダーメイド仕様のご提供
✔同一部品上で複数仕様の適用(塗り分け対応)が可能
✔短納期対応(有償)が可能
PFAS(フッ素化合物)を使用していない、人体・環境にやさしいコーティングの施工も対応可能です。
プラズマコーティングの適用事例紹介
プラズマコーティングの具体的な適用事例を紹介します。粘着性の高い材料を扱う装置部品に本コーティングを施すことで顕著な効果が現れています。
フィルム巻取り用ガイドロールへの適用

樹脂フィルムの巻取り工程で使用されるガイドロールでは、フィルムの貼り付きや滑り不良を防止しました。プラズマコーティング層の高い耐久性により2年以上連続使用しても性能が維持され、清掃頻度の減少などメンテナンスコスト削減に繋がっています。
おむつ製造業/ガイド部品への適用

おむつ製造業において不織布の搬送および折り工程にて使用されるガイド部品(ガイドバー等)では、不織布に対する滑りを良くし、潤滑性を付与することで生産効率の向上に貢献しました。プラズマコーティング皮膜の高い耐久性により従来コーティングの3倍を超える長期間にて使用されており、メンテナンスコストの削減に繋がりました。
様々な固体潤滑コーティングがありますが、中でもプラズマコーティングは非粘着性と高い耐久性を兼ね備え、幅広い用途で効果を発揮します。当社ではこの技術を通じて現場の課題を解決し、設備の信頼性向上とコスト削減に貢献してきました。低摩擦コーティング導入をご検討の際は、ぜひ当社までご相談ください。表面処理技術のエキスパートとして最適なソリューションをご提案いたします。
プラズマコーティングに関する資料をダウンロードいただけます
