カーボンロール(CFRP製ロール)への非粘着処理|プラズマコーティング
近年製造業で採用が拡大しているカーボンロール

カーボンロールとは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の軽量・高剛性なロールです。従来の鉄製、アルミ製の金属ロールに比べて重量が大幅に軽いため、機械の高速回転や急加減速に伴う負荷を低減できます。紙おむつ製造ラインなど高速化が求められる搬送工程では、アルミロールに代わりこのカーボン製のロールが採用されるケースが増えています。軽量化によりモーター負荷の低減や生産スピード向上が可能となり、生産効率アップにも貢献します。 CFRP製のカーボンロールは高強度・軽量で高速ラインの搬送ローラーに適しています 。
このカーボンロールに、弊社のプラズマコーティングを適用することにより、粘着剤が付着しにくい超非粘着表面が得られます。プラズマコーティングは製造現場で広く採用されている、高い離型性(非粘着性)と耐久性を両立した特殊コーティング技術です。
また、求められるニーズによっては同時に表面特性により適度なグリップ力(摩擦特性)や滑り性(低摩擦性)も付与することが可能であり、ウェブ搬送用ロールに要求される「くっつかない✕滑らない」「くっつかない✕滑る」様々な表面も実現可能です。
プラズマコーティングは鉄・ステンレス・アルミはもちろん、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やエンジニアリングプラスチック製の部品にも施工可能で紙おむつや粘着テープ製造といったコンバーティング分野をはじめ幅広い産業分野で活用されています。
おむつ製造装置アイドラーロールへの
プラズマコーティング施工事例
紙おむつの製造工程では、不織布シートや吸収材シートを高速で搬送・貼り合わせするために多数の搬送用アイドラーロール(従動ローラー)が使用されています。近年、ライン高速化のため前述のカーボンロールが多用されていますが、その表面に付着するホットメルト系接着剤や樹脂が大きな課題でした。
通常、このような粘着物対策にはテフロン™(フッ素樹脂)コーティングが使われます。しかし一般的なフッ素樹脂コーティングは約400℃の高温焼付けが必要でCFRP製ロールには適用できず、せっかくロールを軽量なカーボン製に置き換えても接着剤の付着トラブルでライン停止や製品不良が発生し、生産効率が十分に向上しないケースがありました。
また、その対策としてシリコンテープやテフロンテープ、またガラステープを巻き付けることで現場での改善を図るケースも多数ございますが、そもそも効果がなく、また耐久性に乏しく巻き換えの頻度も多く、長期的な対策としては考えにくいとされています。
プラズマコーティングによりローラーのこびりつき改善・長寿命化
この問題に対し、当社はおむつ製造装置のアイドラーロール表面にプラズマコーティングによる非粘着処理を施工しました。その結果、ロール表面に付着した接着剤が簡単に剥離し、ローラーへのこびり付きがほとんど起こらなくなりました。粘着物の付着を防止することで清掃作業の手間も大幅に軽減され、計画外のライン停止が減少して製造ラインの稼働率が向上しました。
また、プラズマコーティングは耐摩耗性にも優れているためコーティング効果が長持ちし、ロール表面の性能劣化を防いでいます。実際に本施工を導入いただいた紙おむつメーカー様では、「非粘着かつグリップ力のあるロール」によって生産ロスが削減され、メンテナンス頻度も下がるなど大きな効果が報告されています。現在では当社のプラズマコーティング技術が複数のおむつ製造ラインで採用され、安定稼働に寄与しています。
非破壊コーティングで
母材を再利用できる独自技術
プラズマコーティングによる表面処理は、当社独自の非破壊コーティング技術によって行われます。一般的なコーティング手法では、施工時にどうしても母材に傷が入ってしまい、古いコーティング層を除去する際にロール母材の表面を研磨して傷めてしまったり、高温熱処理によってCFRP素材を劣化させてしまう恐れがあります。その結果、ロール自体が使い捨てとなってしまい、やむをえず交換せざるを得なくなるケースも少なくありません。
これに対し、当社のプラズマコーティング施工は母材へのダメージがほとんどない特殊技術で行われ、CFRPなど熱に弱い素材にもダメージを与えません。そのため、長年の使用によりコーティングが摩耗しても既存の部品を利用して再コーティング可能です。一度導入いただいたカーボンロールを繰り返し再利用できるため、新しいロールを製作・購入するコストを抑えられます。実際に当社コーティングを施したフィルム搬送用カーボンロールでは、10年以上にわたり再コーティングを重ねて使用継続している事例もあり、新規ロール調達が不要になったことで大幅なコスト低減に寄与しています。このように、当社のプラズマコーティングは表面を傷めず何度でも施工できる点が他社にはない強みです。
3つのメリット 長寿命化・コスト削減・再利用性
カーボンロールへのプラズマコーティング施工によって得られるメリットを3つご紹介します。
ロールの長寿命化
高硬度の溶射皮膜により表面の耐摩耗性が飛躍的に向上し、ロール表面の摩耗や劣化を防ぎます。コーティング効果が長期間持続するため、ロール交換サイクルを延ばせて設備の稼働寿命が延長します。
コスト削減
非粘着コーティングによる安定稼働でライン停止や製品不良の減少が期待でき、清掃・保守にかかる手間とコストを削減します。さらに摩耗した際も再コーティング可能なため新品ロールの買い替えが不要となり、設備トータルコストの大幅な低減につながります。
母材再利用(環境負荷低減)
既存ロールを再生利用できるため、不要になったロールの廃棄を減らせます。高価なCFRP製ロールを繰り返し再利用できることは経済的メリットだけでなく、資源の有効活用という環境面のメリットもあります。プラズマコーティングは脱着式カバー等と違い剥がれ落ちる心配がなく、長期にわたり安定した性能を発揮します。