炭酸ガス吸収塔に生じる腐食と防食溶射による局部腐食対策

炭酸ガス(CO₂)吸収塔は、天然ガス・合成ガス・排ガスなどからCO₂を除去する装置です。一般に水溶液アミン(MEA/DEA/MDEA 等)を用い、塔内でガスと液を接触させて化学吸収によりCO₂を捕捉します。運転温度はおおむね40~80℃(部位により差)で、CO₂は水と反応して炭酸(H₂CO₃)を生じ、炭酸腐食(carbonic acid corrosion)のポテンシャルを高めます。さらにアミンの劣化で生成する熱安定塩(HSS:ギ酸塩・酢酸塩・チオ硫酸塩等)や、酸素混入・不純物の影響により、腐食性は増大します。

その結果、塔内下部や液だまり、板支持部および充填物支持部(支持格子)、降液管周辺では腐食生成物や固形不純物が滞留しやすく、堆積物下で局所的に腐食が進む「デポジット腐食(堆積物下腐食)」が発生しやすくなります。実際、堆積物の有無で腐食挙動は大きく異なり、堆積物下では局部腐食が優先的に発達すると指摘されています。CO₂吸収塔におけるこの種の局部腐食(孔食・すきま腐食)は短期間で深刻な減肉を引き起こし、設備の信頼性を脅かす課題となっています。

事例紹介:炭酸ガス吸収塔への防食溶射施工事例

ガス処理設備のCO₂吸収塔(炭酸カリウム〔K₂CO₃〕溶液循環方式)の下部内壁では、堆積の影響を受けやすい塔板支持部および充填物支持部(支持格子)、降液管周辺で、堆積物下の局部腐食(孔食・すきま腐食)に起因する深い損傷や減肉が多数確認されていました。運転停止時の内部点検でも、同様の腐食が繰り返し指摘され、信頼性の確保が課題となっていました。

従来は有機ライニングの更新や肉盛り溶接による補修も検討されましたが、代替策として、腐食部のブラスト清掃後に耐食合金による防食溶射を施工しました。溶射によって形成される合金皮膜が鋼板を覆い、腐食環境との接触を物理的に遮断するとともに、アルカリ性の炭酸塩・アミン環境に対して安定な合金耐食性が機能するため、堆積物下での局部腐食の発生・進展を抑制することが期待されます。

施工後は、対象部位での腐食進行が明らかに抑制されました。次回の定期内部検査でも新たな深刻腐食は認められず、溶射皮膜の有意な厚み減少も確認されませんでした。これらの結果は、CO₂吸収塔における腐食に対し、防食溶射が実用的かつ有効な対策であることを示しています。


従来の対応方法とその限界

アミン品質管理・再生・不純物管理

HSS低減、溶解鉄の管理、微粒子微粒子ろ過、酸素混入の抑制などが行われます。これは腐食因子を低減する基本策ですが、塔内の滞留域・死角では堆積物が残存し、通気差(differential aeration)環境が維持されるため、清浄化の合間にも局部腐食は進行し得ます。運転条件変動や負荷変化時には再発しやすく、根本的な局部アノードの発生自体を防ぎきれないことが多いのが実情です。

材質選定

炭素鋼からオーステナイト系ステンレス鋼、二相系(2205 等)、Ni-Cr-Mo 系合金(Alloy 625 等)へのアップグレードは有効な選択肢です。しかし高価な耐食合金は初期投資・調達リードタイムの制約が大きく、大規模な取り替えや溶接肉盛り(クラッディング)には長い工期が伴います。結果として、計画停止(ターンアラウンド)以外での実施が現実的でない場合が多くなります。

防食塗装(有機ライニング)

塔内の化学的に厳しいアミン環境(アルカリ性、HSS、温度サイクル、蒸気洗浄)では、有機塗膜が軟化・劣化・剥離しやすいことが報告されています。ピンホールや付着不良部から下地鋼が露出すると、そこを起点に局部腐食が急速に進展するリスクがあります。加えて数年ごとの塗り替え・部分補修が必要になり、施工管理の難易度・停止期間・ライフサイクルコストの面で負担となります。④溶接補修・肉盛り:
検査で見つかった孔食部/減肉部に対し、肉盛り溶接やパッチ当てで補修する方法です。しかし圧力容器・塔槽類の補修溶接は、歪み・熱影響による材質劣化や、必要に応じた応力除去熱処理(PWHT)の負荷が課題です。内部溶接はアクセス性にも制約があり、工期・コスト面での負担が大きく、突発的な実施は困難です。以上のように、従来手法だけでは堆積物下での局部腐食を根本から抑止するには限界があります。

腐食環境に強いオーステナイト系ステンレス鋼など耐食材を採用する方法も取られます。実際、高価な耐食合金はコスト・工期の面で制約が大きく、結局大規模な補修交換が必要となります。

溶接補修・肉盛り

検査で見つかった孔食部/減肉部に対し、肉盛り溶接やパッチ当てで補修する方法です。しかし圧力容器・塔槽類の補修溶接は、歪み・熱影響による材質劣化や、必要に応じた応力除去熱処理(PWHT)の負荷が課題です。内部溶接はアクセス性にも制約があり、工期・コスト面での負担が大きく、突発的な実施は困難です。以上のように、従来手法だけでは堆積物下での局部腐食を根本から抑止するには限界があります。

防食溶射の有効性

防食溶射

防食溶射は、溶融した金属粒子を高速で基材表面に吹き付け、緻密な金属被膜を形成します。防食溶射によって得られる金属皮膜は母材鋼板を腐食環境から遮断し、スラッジ堆積下でも腐食の進行を食い止める効果的なバリアとなります。

以下に、防食溶射による腐食対策の主な利点をまとめます。

①堆積物下での腐食遮断

溶射金属皮膜が鋼材表面を連続的に覆うことで、CO₂由来の炭酸(H₂CO₃)やアミン/HSSを含む液が下地へ到達するのを防ぎます。堆積物中で形成される差動通気セルでも、皮膜がバリアとして作用し、局部アノードの発生を抑制します。

②高温・アルカリ性アミン環境下での耐久性

耐食合金系などの溶射合金は、アルカリ性アミン・HSS・炭酸環境下でも安定な耐食性を示します。有機塗膜のように温度サイクルや蒸気洗浄で軟化・剥離することがなく、塔内清浄化にも耐えるため、長期間にわたり保護機能を維持できます。

③現場施工性の高さ

溶射は低入熱プロセスで母材への熱影響が無く、溶接肉盛りのような歪みや材質低下を招きません。常温施工であり、塗装のような長時間の硬化養生や溶接後のPWHTも不要です。高さのある吸収塔でも内部足場と専用機材で直接施工でき、比較的短時間(数日程度)で広範囲を処置可能です。

④部分補修や再施工が容易

万一の機械的損傷や局所欠陥があっても、その部分のみブラスト処理→再溶射で補修可能です。全面やり直しを避けつつ劣化部をピンポイントで是正でき、将来的なメンテナンス性に優れています。

⑤検査・寿命管理の容易さ

金属皮膜であるため、超音波厚さ計による肉厚モニタリングや外観検査を継続的に実施できます。定期検査で皮膜状態を把握しつつ長期運転が可能で、従来の有機ライニングと比較して補修・再施工の頻度が抑えられ、長期的な保全費用の低減に資する事例も報告されています。

防食溶射を活用すれば、炭酸ガス吸収塔の寿命延長と信頼性向上が期待でき、ひいては予期せぬ稼働停止や大規模修繕の回避によるコスト削減にもつながります。。デポジットアタック対策にお悩みの方は、ぜひ「カンメタエンジニアリングの防食溶射」という選択肢をご検討ください。