セパレーター・レシーバー・ノックアウトドラムに生じる腐食と防食溶射による局部腐食対策

セパレーター(気液分離器)・レシーバー(受器)・ノックアウトドラムは、配管系や装置から持ち込まれる液滴・固形分・凝縮水を除去し、下流機器を保護する要素装置です。運転中は気相と液相が共存し、酸性の気体や塩化物、硫化物、微細な固形分が混在します。底部では鉄硫化物スラッジや砂、錆などが滞留しやすく、堆積物下で酸素濃淡差やpH低下、塩化物濃縮が生じ、局部腐食(孔食)が促進されます。

さらに、取入口の衝突部や整流板周辺では、液滴の衝突・せん断に起因するエロージョン・コロージョンが重畳し、側板や仕切り板の角部・溶接止端ではすきま環境が形成されやすく、局部腐食の起点となります。液面変動部では濡れ乾きの繰り返しによる腐食が、付属品や異材接合部では電位差による影響が加わることもあります。これらが組み合わさることで、一般腐食よりも速い進行で局部的な減肉が発生し、健全性に影響を及ぼす重要課題となります。

事例紹介:セパレーター/ノックアウトドラムへの防食溶射施工事例

あるセパレーター系容器では、入口衝突帯・整流板周囲・底部の液たまり領域で孔食と減肉が確認されました。開放点検に合わせて内面をブラストで清浄化し、金属溶射を適用して封孔処理で仕上げました。施工範囲はシェル内面の広範囲で、堆積物下・衝突部・すきま部・液面変動帯を含めて母材との直接接触を遮断しています。

15年後の点検では、上部側の健全性は良好で、下部側の一部に損傷と母材露出が確認されました。底部全域を対象に再溶射と封孔で補修し、金属皮膜の連続性を回復。補修後は同部位での新たな深刻腐食は認められていません。

本事例では、内部の大部分が連続した金属皮膜で覆われていることにより、堆積物下腐食だけでなく、衝突帯でのエロージョン・コロージョン・すきま腐食・濡れ乾き部での腐食に対しても保護が確保されています。


従来の対応方法とその限界

セパレーター・レシーバー・ノックアウトドラムにおけるデポジット腐食への従来対策には様々な方法がありますが、いずれも一長一短が指摘されています。

定期洗浄・排泥

ドレン排出、内部洗浄、開放点検でスラッジや遊離水の滞留を抑える運用は有効です。しかし、運転再開後の短期間で再び堆積・濃縮が進む場合が多く、清掃間隔の合間にも局部腐食が進展し得ます。既に形成された深い孔食は清掃後も自然に収束しにくく、根本抑止には不足します。

材質選定

酸性水や塩化物環境に配慮した材質の見直しや、限定的な耐食合金の採用は一定の効果を示します。一方、全面的な高合金化はコストや工期、調達性の制約が大きく、流動摩耗腐食が支配的な部位や堆積域の再発を完全には抑えられないことがあります。

防食塗装(有機内面被覆)

内面被覆は初期バリアとして機能しますが、温度変動や蒸気吹き、化学洗浄などの負荷で軟化・膨れ・剥離が生じやすく、ピンホールや剥離部から下地鋼板が露出すると、そこを起点に局部腐食が急速に広がります。部分補修や再被覆の頻度が高まり、停止日数と保全費が増大しがちです。

溶接補修・板厚肉盛り

取入口衝突部や底部滞留域の減肉に対し、肉盛り溶接やパッチ当てで対応する方法があります。ただし、圧力容器部材の補修では施工後に応力除去熱処理を要する場合があり、開先加工や熱影響による材質変化・歪みのリスクも無視できません。計画外停止での実施は現実的に難しく、工期・コストの負担が大きくなります。このように従来手法のみでは、堆積物下腐食や流動摩耗腐食、すきま腐食など複合的な損傷様式を長期にわたり抑え込むには限界があります。

防食溶射の有効性

防食溶射

防食溶射は、溶融した金属粒子を高速で基材表面に吹き付け、緻密な金属被膜を形成します。防食溶射による金属皮膜は、母材を腐食因子から遮断し、堆積物下・衝突部・すきま部・液面変動帯など装置内の多様な環境で局部腐食の発生・進展を抑える実装性の高いバリアとなります。

以下に、防食溶射による腐食対策の主な利点をまとめます。

①堆積物下・すきま部の腐食遮断

金属皮膜が鋼表面を連続的に覆い、底部の水分・塩類・硫化物スラッジや、仕切り・付属品周りのすきま環境から鋼板を隔離します。差動通気やpH低下、塩化物濃縮が生じやすい条件下でも、局部アノードの形成と孔食の深掘れを抑制します。

②酸性水・混相流環境での耐久性

アルミニウム系や耐食性の高い合金系の溶射皮膜は、湿潤硫化水素・二酸化炭素・塩化物が混在する環境で安定した耐食性を示します。有機被覆のように温度サイクルや蒸気吹きで軟化・剥離を起こしにくく、洗浄や再起動を繰り返す装置でも保護機能を維持できます[8]。

③現場施工性(低入熱・常温施工)

溶射は母材への熱影響が小さく、溶接肉盛りのような熱歪みや性質低下を招きません。常温施工のため、硬化養生や応力除去熱処理も不要です。大型容器でも内部足場と専用機材で短期間に広範囲を処置でき、計画停止中の工事に適合します。

④局所補修・再施工の容易さ

取入口周辺の衝突帯やレベル計ノズルまわりなど損傷が集中する箇所は、当該部のみブラスト→再溶射で補修可能です。全面更新を要さず、保全計画の柔軟性が高まります。

⑤検査・寿命管理の容易さ

金属皮膜であるため、超音波厚さ計による減肉モニタリングや外観検査を継続的に実施できます。防食溶射へ切り替えた設備では、有機被覆に比べ補修頻度と停止日数が抑えられ、ライフサイクルコストの低減が報告されています。

セパレーター・レシーバー・ノックアウトドラムにおける局部腐食(堆積物下腐食・流動摩耗腐食・すきま腐食・濡れ乾きの繰り返し・異材接合部での電位差影響)は、入口衝突帯や整流板周辺、底部の液たまり領域、ノズル取り合い・補強板まわりなどの局所条件が重なる部位で生じやすく、限られた範囲でも確実に減肉を進めるため、設備健全性を左右する重要課題です。

従来の排泥・洗浄、材質選定、有機内面被覆、溶接補修といった対策だけでは、再堆積・再濃縮や被覆の劣化・はく離、局部アノードの再形成を完全には断ち切れません。結果として、漏えいリスクや予定外停止の懸念が残り、保全費や停止日数の増加に直結する場面が生じます。

一方で、カンメタエンジニアリングの防食溶射に代表される金属溶射は、遮断性・耐久性・施工性の観点から、これら分離系機器特有の複合損傷に対して現実的かつ有効な解となり得ます。連続した金属皮膜が下地と腐食因子の接触を断ち、堆積域・衝突帯・すきま部・液面変動帯まで広くカバー。局部損傷は再ブラスト→再溶射で機動的に補修でき、超音波厚さ計などによる監視とも相性がよく、長期のライフサイクルコスト低減に寄与します。