水分含有粉末の付着防止|PFP処理
粉体原料を扱う製造現場では、「粉体が設備に付着して流れない」「湿気のある粉体がこびり付きやすい」といった課題に直面することが少なくありません。特に水分を含む粉体では、液橋力や凝集性によって付着や詰まりが起きやすく、製品品質や生産効率の低下、清掃作業の負担増加といった深刻な影響を与えることもあります。
お客様の課題
対象設備は、水分を含む粉体を取り扱うステンレス製の脱気器。お客様では当初、付着対策として内面にテフロン板を装着し、滑り性を確保されていました。ところが、長期間の使用により摩耗が進行し、テフロン素材が剥がれて製品中に混入するという重大な問題が発生。
異物混入が許されない製造環境であったため、再び別の表面コーティングを検討されたものの、剥離によるコンタミ懸念が拭えず、抜本的な対策が見つからない状況にありました。

また、対象粉体は水分を含んでいたこともあり、一般的なディンプル処理では十分な効果が得られない可能性があることから、対策に慎重になられていたようです。
カンメタエンジニアリングの提案
このような背景を踏まえ、当社カンメタエンジニアリングからは、以下の4つの特長を軸にPFP処理の導入をご提案しました。
① 実粉体を用いた無償の事前試験で、最適仕様を検証
まず、お客様から提供された水分含有粉体を使用し、弊社工場内にて模擬的な付着試験を実施。そこで得られた結果をもとに、最適な仕様を選定しました。この実環境再現型の事前試験(弊社無償協力)により、社内でも効果に対する確信を得ることができ、導入決定を後押しする材料となりました。
② コーティングレスのため異物混入リスクゼロ
PFP処理は、金属表面を凹凸改質する処理であり、フッ素系コーティングのように剥がれる心配がありません。そのため、化学・医薬品・食品などの高い清浄度が求められる分野でも安心してご利用いただけます。
③ 工場施工によるコストパフォーマンス向上
今回の脱気器は取り外しが可能な構造であったため、当社工場にて施工を実施。施工コストを抑えながら高品質な仕上がりを実現できました。
④ 表面凹凸による付着面積の最小化
PFP処理により金属表面に微細な凹凸を形成することで、粉体との接触面積を減らし、ファンデルワールス力や液橋力を低減。これにより、水分を含む粉体でも高い滑り性・離型性を確保できます。
結果
PFP処理を施工したことで、現場では明確な改善効果が得られました。まず、脱気器内面の粉体付着(ブリッジ・閉塞)が約70~80%減少し、粉体の滑落性が大幅に向上しました。これにより、装置の詰まりやライン停止のリスクが大きく軽減され、安定した生産運転が可能となりました。
また、粉体の残留が少なくなったことで、清掃作業にかかる時間が短縮されました。従来は手間のかかっていたブラシ清掃やエアブローも、簡単かつ短時間で済むようになり、作業負担の軽減と原価低減にもつながっています。
さらに、PFP処理はコーティング剤を使用しない「コーティングレス処理」であるため、運転中の剥離や異物混入(コンタミ)の心配がなくなり、製品品質への信頼性も向上しました。品質トラブルの予防と再発防止という面でも、非常に大きな効果を発揮しています。