ハステロイの基本的性質

ハステロイ(Hastelloy)は、ニッケルを主成分とした高耐食合金の総称です。モリブデンやクロム、鉄、タングステンなどを組み合わせることで、酸性・還元性の両環境において優れた耐食性を発揮します。特に化学プラントや排ガス処理装置、製薬装置など、腐食性が高い環境で使用される代表的な高耐食材料です。

性質数値(代表値)備考
主成分Ni–Mo–Cr系ニッケル基耐食合金
密度約8.9 g/cm³ 高密度で剛性が高い
融点約1350–1400 ℃高温に強い
引張強さ約690–785 MPa(Hastelloy C-276)高強度
ヤング率約205 GPa弾性に優れる
熱膨張係数約12 × 10⁻⁶/K熱変形が少ない
電気抵抗率約12 μΩ·cm導電性は中程度

ハステロイは、高温・高圧・強酸性などの過酷な環境下でも構造強度を維持できる金属材料です。そのため、化学・エネルギー・環境分野での装置材として重要な役割を果たしています。

ハステロイの耐食性

ハステロイは、酸性・塩化物・還元性・酸化性など、さまざまな腐食環境において極めて高い耐食性を示します。特に、塩化物イオンによる応力腐食割れや孔食に対して強い抵抗性を持っています。
この特性により、化学プラントの反応塔、配管、熱交換器、排ガス処理設備など、強腐食環境で使用される重要部材に採用されています。

耐食性が発揮される主な環境

  • 酸性環境:塩酸・硫酸・リン酸・酢酸などに高い耐性があります。
  • 還元性環境:モリブデンを多く含むため、還元性酸にも強いです。
  • 酸化性環境:クロムの作用により、酸化性溶液中でも表面を保護します。
  • 塩化物環境:塩化物イオンによる孔食・応力腐食割れに強いです。
  • 高温環境:高温下でも酸化皮膜が安定し、腐食を抑制します。

ただし、強い酸化条件下での硝酸や高温の酸化雰囲気では、腐食速度が増す場合があります。使用環境に応じたグレード選定(C-22、C-276、C-4など)が重要です。

ハステロイが耐食性に優れている理由

ハステロイの耐食性は、主成分であるニッケル・モリブデン・クロムの相互作用によって形成される安定した酸化皮膜に由来します。
この皮膜は非常に緻密で、金属表面を外部の腐食因子から遮断します。また、局部的に損傷しても、酸素に触れることで再生される自己修復性を備えています。

酸化皮膜の特性

  • 自己修復性
    表面が損傷しても、酸素や水分と反応して速やかに酸化皮膜が再生します。
  • 緻密さ
    酸化皮膜は極めて薄いにもかかわらず、イオンや電子の透過を防ぐ構造を持ちます。
  • 化学的安定性
    酸性・中性・アルカリ性の幅広いpH領域で安定し、化学反応を抑制します。

このように、ハステロイは「高耐食性ニッケル合金」として、厳しい環境下で長期にわたり安定した性能を発揮します。

ハステロイ特性を機器に付与できる、カンメタエンジニアリングの防食溶射技術

カンメタエンジニアリングではチタン、ニッケル、ハステロイ、モリブデン、モネルなどの溶射材による工業機器向けの防食溶射を得意としております。

これら溶射材にて機器へ溶射を施すことによって、特定の部分に各金属が持つ特性を付与することが可能です。

製油所、石油化学プラントなどの分野における防食溶射のパイオニアとして、50年以上にわたり経験・ノウハウを培ってきました。国内ほとんどの大手製油所・石油化学会社様のプラントへの施工実績があり、これまでの施工事例は延べ一万基にも及んでいます。

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