モリブデンの基本的性質

モリブデン(Mo)は、高融点・高強度・高弾性率を持つ金属であり、耐熱性や耐食性にも優れています。鋼材の添加元素として使用されるほか、電極材料や真空装置の構造部材など、過酷な条件下での使用に適しています。

性質数値(代表値)備考
原子番号42遷移金属
密度約10.2 g/cm³比較的高密度
融点約2623 ℃鉄やニッケルより高い
引張強さ(焼きなまし材)約400–600 MPa高温でも強度を維持
ヤング率約330 GPa非常に高い剛性
電気抵抗率約5.3 μΩ·cm導電性が良い
熱膨張係数約5.1 × 10⁻⁶/K熱変形が小さい

高温でも強度低下が少ないことから、タービンブレード、炉部品、電極、ヒーター、真空装置の構造材などに利用されています。また、耐食鋼や高温合金の主要な添加元素としても重要です。

モリブデンの耐食性

モリブデンは、酸化性・還元性の両方の環境において比較的良好な耐食性を示します。特に、酸性環境や塩化物を含む溶液中での腐食抑制効果が高く、ステンレス鋼やニッケル合金に少量添加することで、その耐食性を大幅に向上させます。

モリブデン自体も、硫酸・リン酸・有機酸などの環境で安定しており、高温下でも酸化被膜を形成して金属表面を保護します。

耐食性が発揮される主な環境

  • 酸性環境:硫酸・リン酸・酢酸などに対して安定。
  • 塩化物環境:モリブデン酸化物皮膜により、孔食や隙間腐食を抑制。
  • 高温酸化環境:表面にMoO₃酸化皮膜を形成し、金属内部への酸化進行を防止。
  • 還元性環境:特に硫黄や炭素を含む環境での耐性が高い。

ただし、モリブデン酸化物(MoO₃)は揮発性を持つため、非常に高温(おおむね800℃以上)では表面が酸化して失われやすい点に注意が必要です。

モリブデンが耐食性に優れている理由

モリブデンの耐食性は、酸化時に形成されるモリブデン酸化物皮膜(主にMoO₂やMoO₃)によるものです。
この皮膜は緻密で、酸素や腐食因子の透過を抑制し、金属表面を保護します。また、酸化と還元が繰り返される環境でも、化学的に安定した状態を維持できます。

さらに、モリブデンはステンレス鋼やニッケル合金中で「孔食抑制元素」として働き、塩化物イオンによる局部腐食を抑える効果があります。

酸化皮膜の特性

  • 自己修復性
    表面が酸化するとモリブデン酸化物が生成し、損傷部を覆って保護します。
  • 緻密さ
    酸化皮膜は薄くても非常に緻密で、酸素やイオンの拡散を防ぎます。
  • 化学的安定性
    中性~弱酸性領域で安定し、化学反応への巻き込みが少ないです。

このように、モリブデンは単体でも耐食性の高い金属ですが、合金成分として加えることで他金属の耐食性を劇的に改善する特徴を持ちます。そのため、モリブデンは「耐食材料を支える陰の主役」として、金属工業において重要な役割を果たしています。

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