ニッケルの基本的性質
ニッケル(Ni)は、銀白色の金属であり、優れた耐食性・耐熱性・靭性を持つ遷移金属です。鉄や銅と比較して化学的に安定で、合金元素としてステンレス鋼や耐熱合金などに広く使用されています。また、磁性を持つ数少ない金属の一つであり、電気・電子材料にも欠かせない存在です。
| 性質 | 数値(代表値) | 備考 |
|---|---|---|
| 原子番号 | 28 | 遷移金属 |
| 密度 | 約8.9 g/cm³ | 鉄(7.9)より重い |
| 融点 | 約1455 ℃ | 高温環境に強い |
| 引張強さ(純チタン) | 約370–450 MPa | 合金化でさらに向上 |
| ヤング率 | 約200 GPa | 鉄(210)に近い |
| 電気抵抗率 | 約7 μΩ·cm | 導電性は良好 |
| 熱膨張係数 | 約13.3 × 10⁻⁶/K | 鉄よりやや大きい |

ニッケルの特徴は、高い耐食性と耐熱性にあります。構造材料や表面処理材料として幅広く利用できる一方で、加工硬化しやすく、塑性加工には注意が必要です。
ニッケルの耐食性
ニッケルは、大気中・淡水・海水・多くの酸性およびアルカリ性環境において優れた耐食性を示します。このため、化学プラントの装置材、海洋機器、発電プラント、さらには電気めっきや触媒材料としても幅広く利用されています。
耐食性が発揮される主な環境
- 海水環境:塩化物による腐食に比較的強い
- 酸性環境:硝酸・リン酸・有機酸に対して良好な耐性
- アルカリ環境:苛性ソーダなどにも安定
- 高温酸化環境:酸化皮膜が安定し、高温下でも表面を保護
酸化性の強い塩化物溶液や高温の硫黄化合物環境では腐食が進行する場合があり、使用条件に応じた材料選定が重要です。

ニッケルが耐食性に優れている理由
ニッケルの耐食性は、その表面に形成される酸化ニッケル(NiO)皮膜に起因します。この皮膜が金属内部を化学的に保護し、腐食反応の進行を抑えます。
酸化皮膜の特性
- 自己修復性
表面が損傷しても、空気中の酸素により自然に再酸化し保護皮膜を再形成します。 - 緻密さ
酸化皮膜は薄くても非常に緻密で、イオンや電子の透過を防ぎます。 - 化学的安定性
中性~弱アルカリ性環境で特に安定し、腐食の進行を防止します。
このため、チタンは「不働態化金属」の代表例として知られています。鉄やステンレス鋼も不働態皮膜を形成しますが、チタンの皮膜はより安定かつ再生能力が高いため、長期的に優れた耐食性を維持できます。
ニッケル特性を機器に付与できる、カンメタエンジニアリングの防食溶射技術
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