水素誘起割れ(HIC)対策における防食溶射の有効性
石油精製・化学プラントの圧力容器や熱交換器では、水素誘起割れ(HIC)による重大なトラブルが現場で発生し得ます。例えば湿潤な硫化水素(H₂S)環境下では腐食反応により鋼材表面で水素原子が発生し、これが鋼内部に拡散してミクロな介在物や空隙に侵入します。鋼中に吸収された水素原子は再結合して水素ガス(H₂)となり内部から圧力を生じさせ、蓄積したガスにより鋼板内部にブリスター(膨れ)が形成されます。ブリスター同士が連結すると亀裂へと成長し、結果として母材内部に亀裂損傷(HIC)が発生します。
HICは外観から判別しにくい内部割れであり、一旦進行すれば装置の健全性を損ない、漏洩事故や長期稼働停止につながるため、現場の保全担当者にとって深刻なリスクです。

事例紹介:大手石油精製・石油化学メーカーでのHIC対策・防食実績

カンメタエンジニアリングのHIC対策防食溶射技術は、既に国内の大手石油精製・石油化学プラントで数多くの採用実績があり、定期検査においても水素誘起割れや腐食減肉の進行が認められないなど、その効果が実証されており、国内プラント関係者から高い評価をいただいております。
独自開発した高耐食性の金属皮膜を装置内部に溶射施工することで、母材表面に耐食合金のバリア層を形成します。溶射であれば既設設備にも現地で直接施工できるため工期短縮とコスト低減に大きなメリットがあります。施工についても、小さな部分補修から大型塔槽まで現地施工が可能で、必要に応じて損傷部のみの局部再溶射でメンテナンスできる柔軟性があります。溶射皮膜の熱膨張係数は母材鋼に近いため塗装のような高温時の剥離膨れが生じにくく、高温プロセス機器でも長期にわたり安定した性能を発揮します。
従来技術とその課題
HIC対策としてこれまで様々な腐食・割れ防止技術が採用されてきました。しかし各手法には一長一短があり、現場では十分な効果が得られないケースもあります。代表的な従来技術と課題を以下に挙げます。
クラッド鋼(耐食合金を貼り合わせた複合鋼板)
腐食に強いステンレスやニッケル合金の層で炭素鋼の母材を保護し、HIC発生源となる腐食そのものを抑制する効果があります。しかし、クラッド鋼板の製造コストは高く大型構造物への適用には費用・工期の面で負担が大きいです。
溶接補修
HICによる割れが生じた箇所をいったん肉盛溶接で埋めて修復する対処療法です。応急的な延命策にはなりますが、水素侵入という根本原因が除去されなければ再び近傍に割れを誘発する可能性が高く、繰り返しの補修で母材肉厚が減少する懸念もあります。高硬度な溶接部自体が水素脆化し得る点にも注意が必要です。
塗装
樹脂塗料を内部塗装して腐食環境から母材を隔離する方法です。比較的低コストで全面施工できますが、耐熱温度や耐薬品性に限界があり高温のプロセス設備や強酸性の環境では劣化・剥離が起こりがちです。また塗膜と鋼材の熱膨張係数の違いから、高温変動時に膨れ(ブリスター)が発生しやすい問題も指摘されています。このように一般的な塗装だけではHICリスク低減に万全とは言えません。
水素誘起割れ(HIC)はプラント設備の安全運転を脅かす重大リスクであり、その対策を怠れば予期せぬ事故や巨額の損失を招きかねません。従来工法に比べて施工期間が短くコストメリットが大きいカンメタの防食溶射技術は、設備のライフサイクル全体で見ても経済的であり、実プラントでの適用実績がその効果と信頼性を証明しています。
HIC対策に頭を悩ませているプラント技術者の方は、ぜひ「カンメタエンジニアリングの防食溶射」による予防保全をご検討ください。早期対策によって将来的なトラブル防止とメンテナンス費用の削減が期待できます。

