溶射とは

各種産業機械やシステムは、極めて苛酷な環境や条件にも耐えうるように設計する必要があります。その意味で“溶射”は製品性能に欠くことのできない表面改質技術です。

溶射技術は、防せい・防食に対する鉄鋼構造物などの基材保護及び化学機器装置などの耐薬品に対する環境遮断を目的とした溶射と、各工業分野の設備、装置などにおける耐摩耗、耐熱遮熱、絶縁などを目的とする機能的な溶射に区分されます。

溶射の原理

「溶」かして「射」出する

JIS H 8200:2006溶射用語では「燃焼又は電気エネルギーを用いて溶射材料を溶融、又はそれに近い状態にした粒子を基材に吹き付けて皮膜を形成すること。」と溶射を定義しています。その文字の通り、溶射材料を「溶」かして、あらかじめ前処理を行った素地に対して投「射」する技術です。

具体的には、溶射材料が熱源により加熱され、溶融・半溶融状となり、コンプレッサーエアを用い微粒子化され投射されます。投射された溶射粒子は予め適切に前処理した素地に対して衝突し、素地で扁平状に広がりながら急冷されます。そのような溶射粒子が無数に重なり溶射皮膜が形成されます。

溶射の特徴

1. 施工の柔軟性

  • 現地施工ができる
  • 局部的な施工、また長大な構造物にも柔軟に対応できる
  • クラッド・溶接肉盛に比べ、比較的短期間で施工ができる

2. 加工対象に対する制限が少ない

  • 熱膨張係数が機器の母材に近いので膨れが生じにくい
  • 耐熱温度が高い(1000℃以上にも対応)
  • ハステロイからニオブ・タンタルに至るまでの高級耐食材料を使用できる

3. 効果の有効性

  • 他のコーティングに比べ、環境遮断能力が高い
  • 溶射施工の前処理としてブラストを行うので、機器の母材表面に圧縮応力が付与され、割れが起こりにくくなる
  • 耐食性が高く、長期間の使用に耐えるので4年定修にも対応できる

溶射の分類

溶射は技術は主に以下のように分類されます。